JUN. 2020
2020年5月12日、Surface&Architectureはオフィスを移転しました。
新型コロナウィルスの影響により外出自粛が要請されるなか、このタイミングで引越しに踏み切ったのは、「働き方」に関する課題を解決するためでした。
Surface&Architectureの働き方は、ルールを極力排除して、働く場所や時間を自由に選び、一人ひとりが自立して働くというものです。自立して自由に働く。こんなことをずいぶん前から実践してきましたが、それは大きな魅力であり、働きやすさでもありながら、一方ではストレスを生じさせる原因にもなっていたのです。
移転前、オフィスは集合住宅2戸に分かれ、1棟は1フロア、もう1棟は2フロアの計3フロアに分かれていました。オフィス空間が分断されていた上に、働く場所や時間がそれぞれ異なっていたために、すれ違いが起きやすく、お互いに気を使いすぎてしまったり、流れていく情報や空気が偏り、知るべきことを知らされていなかった、そんな疎外感を感じさせてしまうことも起きました。
働き方に課題があることがはっきりしたのは、働き方をより良くしようとする社内プロジェクト「働く体験のデザイン」のヒアリングからでした。正社員やパートナーへSurface&Architectureで働く体験の良い面や悪い面をヒアリングをしていくなかで、さまざまな課題が明らかになりました。体制・役割の不明確さ、社内の意思疎通やコミュニケーションの問題…。さまざまな課題が絡みあい、どこから手をつけるべきかを見極めることもなかなかの難題で、重要課題を選び出しメンバー全員が参加するワークショップなどを通して解決方法を模索しました。おそらくワークショップに参加した誰もが感じた解決の一つの方向性が、比喩的な意味でも文字通りの意味でも「人が見える」ことだったのだと思います。
「働く体験のデザイン」を進めている間に、旧オフィスの隣にある「羽根木IGH」という集合住宅に空きがあるという知らせが届きました。メンバー全員がひとつのフロアに何も隔てられることなく働くことができる。内見して、ここなら「人が見える」環境を作ることができると感じ即断しました。そして、この物件情報をみつけてくれたスタッフから「新しいオフィスにみんなが何を求めているかをヒアリングして、レイアウトなどとりまとめましょうか?」という申し出がありました。新しいオフィスは代表である自分が作るのではなく、メンバーが主体的に関わりボトムアップで作っていく。一人ひとりが自分の場所である、という感覚を持ってもらえるようになるのではないかと考えて、この申し出にとても感謝し、ほぼ全てを任せて進めてもらいました。
新型コロナウィルスの影響でオフィスを持つことをやめて、全員がリモートで働くという働き方が話題になりました。我々もそのような働き方を選択することができたと思います。それでも、オフィスを持つ選択をしたのは、単にスキルの高いメンバーがわずかな接点で協業するという形態ではなく、同じ未来を見て同じ想いをもって仕事をしていきたいという考えからでした。考え方が古いところもあるのかもしれませんが、こうした想いは同じ空間を共有することの影響は大きいと考えています。
引越し作業については、すでに全員が在宅勤務をしているタイミングだったこともあり、通常の引越しのように移転の数日前に全員がワッと集まって作業することはできませんでした。そのため梱包などの引越し作業は、1日に2、3人に絞り、感染リスクをできるだけ抑えられるようにスケジュールが組まれました。タスク、スケジュール、進捗状況をGoogle スプレッドシートで共有して進めたことで、引越しは非常にスムーズに終えることができました。(今にして思うと、これまでのUX/UI系の大規模案件でタスクの洗い出しや切り分けを行いマネジメントすることに長けていたことや、メンバー全員がとても主体的であったことがスムーズに進められた理由ではないかなと想像しています。もちろん中心的に動いてくれたメンバーは、こぼれたタスクを拾ってくれたり大変だったことは間違いありませんが。)
移転前のヒアリングで新オフィスにメンバーが求めていることは、コミュニケーションが増えることでした。仕事に関する話だけでなく、「人が見える」ような、たわいもない雑談が生まれるような場所です。チームビルディングの際に用いられる言葉に「心理的安全性」という言葉があります。チームのパフォーマンスを向上させるには、この心理的安全性を高める必要があり、心理的安全性とは「チームの中で自分の思ったことを自由に発言しても不利益を被らない」と感じられる状態のことを意味するそうです。日常のたわいもない雑談こそ、この「心理的安全性」を高めるものではないでしょうか?
そして、思えばデザインの源泉である「共感」と「創造」は、対話から深まり、飛躍するものです。新オフィスが社内のメンバー間の対話が生まれる場であるばかりでなく、私たちとともに仕事を進めるクライアントやパートナーとの対話から新しいチャレンジがはじまる場となることを願っています。新型コロナウィルスはまだまだ予断を許さない状況ですが、みなさまとオフィスで対話できる日を楽しみにしています。