今日は全く内容的にズレるのですが、パウル・クレー、ゲーテ研究をされていた先生の記念講演を聞いた感想を少し。学生時代にお世話になっていたのですが、話の内容はすこぶる難解で、その後、理解したくていろいろと考えてしまうような魅力的な講演でした。
講演の内容は、クレー、ゲーテ、シャロウンなどを例示しながら、絵画、色彩、建築、などを「差延」という概念から読み解く内容だった。スタイルとしては「自己言及」をテーマにゲーデル、エッシャー、バッハを読み解いて行く『ゲーデル、エッシャー、バッハ – あるいは不思議の環』のような知的な冒険であり、混沌として理解できそうでできない、面白さがありました。
「差延」 はデリダの「差延」とは違うようで(あるいは同じなのか?)、織物のように織り込まれ、それが奇妙に変化し別のものがふっとわき上がるような概念だと説明されていた。建築の文脈では、構造的オーダーの様式論と対立し、表層の差延の様式論が、色彩のなかでは、補色、コントラストという対立概念から理解する色彩ではなく、色環の隣接する色彩の移行のなかで捉えられるような色彩論の説明があった。
構造的に考えて行くと、ものごとを対立関係として捉えがちだが(垂直・水平など)、表層的に捉えればそこは対立概念で理解するのではなく、差延として捉えられるのではないか、ということなのだと思う(たぶん)。そして表層の方が本質なのだ、ということだろうか…そう考えると、すごくポストモダン的なのだが、理解が浅いということなのだろうか…