手前味噌な感じだが、今号の「AXIS vol.139」は「デザインとオープンソースハードウェア」というテーマを考えるのにとても良い。このあたりの記事は是非読んでみて頂きたい。
“Lugano Project”
設計図を10ポンドで販売したロンドンのデザイナー の椅子は、DIYが盛んな英・米で製作意欲をかき立てるに留まらなかった。この設計図は著作権が譲渡され遠く離れたブエノスアイレスで生きる人々が収入を得る機会を与えることになったそうだ。
“米国MAKE”
MAKE編集長のデール・ドーティーの言葉で、
消費者は、自分自身が手にしている製品から締め出されていて、その中身に触れることもできなければ、改良することもできない。工業デザインの感覚から言えば、それは完璧な製品なのでしょうが、消費者から見たら全く閉ざされている。(中略)そうした閉じられた世界は、携帯電話も使い捨てになるのです。
アメリカでDIYを盛り上げるMAKE誌は、現在の工業製品のあり方に疑問を持ち、改良したり修理することで使い続けられるモノのあり方を模索しているようだ。一方で、MAKEの雰囲気は、暗いアンチテーゼではなく、「コモディティ化した製品を『プラットフォーム』として扱」ってしまい、その上で自分なりのものを「作る」ことや、「アイディア」を純粋に楽しもうとするオープン、カジュアルな印象が強い。この社会に対する意味とカジュアルなカルチャーがMAKEの魅力なのだろう…
“Platform21=Repairing”
オランダでは、「リサイクルを止めて、リペアーを始めよう」というマニフェストが宣言され、「Platform21=”Repairing”」という展覧会が開催されている。会場ではデザイナーやアーティストが、来場者が持参した壊れたものを修理しているという…(こんな役割をデザイナーが果たすのは面白い!)ハードウェアのオープンソース化が広まれば、今は故障すればすぐに新品に交換となってしまう情報家電も、もっと長く使われるようになっていくのだろうか…修理の意味は「修理することで人は製品に愛着を持つ」ということにもつながる。
“Designers Accord”
アメリカではじまった、デザイナーが「サスティナビリティ」について合意し、協力しあう組織「デザイナーズ・アコード」。最近のDesigners Accordのリニューアルで過去の情報が見え難く(あるいは無くなってしまった?)なってしまったが、以前は、サスティナビリティを向上させたり、環境負荷を低減させるアイディアや事例をオンラインでオープンなデータベースにしようというプロジェクトがあったと思う。データベースで、より具体的に設計図やインストラクションを共有するようになれば、サスティナビリティとオープンソースハードウェアが融合するような活動となるのではないか…
D.I.Y、Repair、Opensource Hardwareとデザインは、ひとつはサスティナビリティという文脈で結びつく。このサスティナビリティは、これまで言われていた静的なサスティナブル・デザインに留まることなく、「工業生産の手段が簡単に入手できるようになり、設計を無償で共有」した個人が活躍し、社会全体のイノベーション速度を向上させるような動的なサスティナブル・デザインを生みだす、と考えられないだろうか…