ソーシャル インタラクション

?少し前から、「ソーシャル インタラクション」について調べている。インタラクションデザインを考えていくなかで面白いテーマになるのでは無いかと感じているからだ。

「ソーシャルインタラクション」とはWikipediaで調べると、社会学の用語で「個人(やグループ)間の動的に変化する一連の社会的行為」と説明されているが、なかなか難解だ。もう少し、簡単に言い換えてしまうと、「個人や(グループ)間の言語的・非言語的コミュニケーション」と言い換えてしまっても、それほど間違いではないだろう。

ネットで「ソーシャルインタラクション」について調べると、Amazon等にあるような、レビューやオススメなどを「ソーシャルインタラクション機能」と 呼ぶようだが、今、関心をもっているのは、ネットワーク越しに得られた人の知識の集積など、2次的な、言語化されたソーシャルインタラクションではなく、リアルな空間でのソーシャルインタラクションだ。

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リアルな空間のなかで、利用者がインタラクティブなモノとインタラクト(文字色がグレーのInteraction)する。今、関心をもっているのはその次の青い文字の「Social interaction」の部分で、インタラクションを行った人と人のインタラクションだ。その場でインタラクティブに同じものを知覚したり、経験を共有できる環境は、文字やテレビなどとは違ったソーシャルインタラクションを引き出す可能性があるし、ソーシャルインタラクションがあることにより、個々のインタラクション自体の質を向上させるのではないかと考えている。既存のインタラクションが人とモノの1対1で考えられているものが多いのに対して、1対Nで考え、N同士のその場でのインタラクションを視野にいれるというモデルを考えて行くことに可能性があるのではないかと。(あるいは、インタラクションデザインの今後の重要な課題の1つなのではないかと。)

「ソーシャルインタラクション」が気になり始めたのは、Exploratoriumの「APE」を読んでからだ(ネタ的に何度も紹介していて恐縮ですが)。「APE」に紹介されている事例で、Spinning Patternsという回転する円盤上の砂をヘラ等を使って美しいパターンに変化させる展示がある。このSpinning Pattersで、1人だけが使える展示と、3人同時に使える展示を設置し、ソーシャルインタラクションにどのような変化があるかが観察された。3人同時に展示を使えるようにすることで、利用者はパターンを描くテクニックについてより話し合うようになり、より複雑なパターンを描くようになったという。もちろん、話し合いが起きるだけではなく、他の人のテクニックなどを見ることで刺激され、新しいことを試みるということも起きる。

タンジブルなインターフェイスの利点は、複数の人が同時にインタラクトできることにあるという。「APE」の例は、展示という特別な空間の事例になるが、今後、タンジブルなインターフェイスをもつ製品が日常的な空間に広がって来た時に、 1対1のモデルから1対Nに移行し、以下のような視点を持ってインタラクションを考えていくことで、新しい可能性が広がるのではないだろうか。

  • インタラクションによって利用者同士のソーシャルインタラクションはどう変わり得るのか
  • どのようなインタラクションの構造がソーシャルインタラクションを誘発するのか
  • 利用者同士のソーシャルインタラクションを製品はどのように活用できるのか

まだまだ、探索しはじめたばかりのテーマだが、引き続きこのテーマを追いかけてみたい。

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デザインリサーチのリサーチ

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日経デザインから、「デザイン・リサーチ・メソッド10 未来のニーズを形にする先端手法」という書籍が発売されるようだ。海外デザイン事務所10社の独自リサーチ手法が紹介されている。収録10社は以下の通り。デザインリサーチのみをこれだけ広範に扱っている書籍は他になく(恐らく)、期待大だ。

【収録10社とプロジェクト事例】

IDEO (アメリカ)
シマノ「COASTING BICYCLE」

seymourpowell(イギリス)
ALICE「ブロードバンドルータ」
STANNAH「介護用エレベーター」

TheAlloy(イギリス)
ARGUS「消防士用デジタルカメラ」
BT「ベビーモニター」

tangerine(イギリス)
BRITISH AIRWAYS「ファーストクラスのシート」
AUPING「介護ベッド」

The Division(イギリス)
パナソニックデザイン社「ブランドビジョン」
日産自動車「インテリアデザイン」

fuseproject (アメリカ)
コカ・コーラ「Coca-Cola Refresh Recycling Bin」

CastelliDesign(イタリア)
日立製作所「スーパーテクニカルサーバ」

AMO(オランダ)
PRADA「PRADA PROJECT」

INNO DESIGN(韓国)
AMOREPACIFIC「LANEIGE」

FRONT (スウェーデン)
「Sketch Furniture」

?まだ、書籍は手元にも無いが、恐らく中心的に扱われているであろう、エスノグラフィー、フィールドワークについて参考になりそうな書籍等をあげておきたい。(その他にも良いものがあれば、是非教えて欲しい。)

  • ミツエーリンクスの簡潔な解説
  • 「発想する会社!」 トム・ケリー (著) IDEOと言えばこの本。事例を通して、オブザベーション、プロトタイピング等のデザインプロセスを概観できる。
  • 「フィールドワーク」佐藤 郁哉 (著) 定量調査と定性調査の役割などを概説する、基本的な入門書。
  • 「フィールドワークの技法」佐藤 郁哉 (著) より実践的なフィールドワークの入門書。フィールドワークはこのように行うものなのか、というあたりが分かる。
  • マーケティングインタビュー」上野啓子(著)フィールドワークではないが、フォーカスグループインタビューの奥深さが感じられる。
  • Reseach Equipment Jan Chipchase氏のリサーチ用の装備。
  • SONICRIM デザインリサーチに特化した調査会社。
  • EPIC2009 毎年開催される、エスノグラフィーの産業応用に関するカンファレンス。昨年はAXISからも参加。一昨年はブレンダ・ローレルが基調講演を行った。

ここのところ、デザインリサーチのリサーチが疎かだった。もういちど、今のリサーチ方法を問い直す良い機会となりそうだ。

 

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デザインとオープンソースハードウェア

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手前味噌な感じだが、今号の「AXIS vol.139」は「デザインとオープンソースハードウェア」というテーマを考えるのにとても良い。このあたりの記事は是非読んでみて頂きたい。

“Lugano Project”
設計図を10ポンドで販売したロンドンのデザイナー の椅子は、DIYが盛んな英・米で製作意欲をかき立てるに留まらなかった。この設計図は著作権が譲渡され遠く離れたブエノスアイレスで生きる人々が収入を得る機会を与えることになったそうだ。

“米国MAKE”
MAKE編集長のデール・ドーティーの言葉で、

消費者は、自分自身が手にしている製品から締め出されていて、その中身に触れることもできなければ、改良することもできない。工業デザインの感覚から言えば、それは完璧な製品なのでしょうが、消費者から見たら全く閉ざされている。(中略)そうした閉じられた世界は、携帯電話も使い捨てになるのです。

アメリカでDIYを盛り上げるMAKE誌は、現在の工業製品のあり方に疑問を持ち、改良したり修理することで使い続けられるモノのあり方を模索しているようだ。一方で、MAKEの雰囲気は、暗いアンチテーゼではなく、「コモディティ化した製品を『プラットフォーム』として扱」ってしまい、その上で自分なりのものを「作る」ことや、「アイディア」を純粋に楽しもうとするオープン、カジュアルな印象が強い。この社会に対する意味とカジュアルなカルチャーがMAKEの魅力なのだろう…

“Platform21=Repairing”
オランダでは、「リサイクルを止めて、リペアーを始めよう」というマニフェストが宣言され、「Platform21=”Repairing”」という展覧会が開催されている。会場ではデザイナーやアーティストが、来場者が持参した壊れたものを修理しているという…(こんな役割をデザイナーが果たすのは面白い!)ハードウェアのオープンソース化が広まれば、今は故障すればすぐに新品に交換となってしまう情報家電も、もっと長く使われるようになっていくのだろうか…修理の意味は「修理することで人は製品に愛着を持つ」ということにもつながる。4375-454-803.jpg

“Designers Accord”
アメリカではじまった、デザイナーが「サスティナビリティ」について合意し、協力しあう組織「デザイナーズ・アコード」。最近のDesigners Accordのリニューアルで過去の情報が見え難く(あるいは無くなってしまった?)なってしまったが、以前は、サスティナビリティを向上させたり、環境負荷を低減させるアイディアや事例をオンラインでオープンなデータベースにしようというプロジェクトがあったと思う。データベースで、より具体的に設計図やインストラクションを共有するようになれば、サスティナビリティとオープンソースハードウェアが融合するような活動となるのではないか…

D.I.Y、Repair、Opensource Hardwareとデザインは、ひとつはサスティナビリティという文脈で結びつく。このサスティナビリティは、これまで言われていた静的なサスティナブル・デザインに留まることなく、「工業生産の手段が簡単に入手できるようになり、設計を無償で共有」した個人が活躍し、社会全体のイノベーション速度を向上させるような動的なサスティナブル・デザインを生みだす、と考えられないだろうか…

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インタラクティブな展示

インタラクティブな展示物の制作途中、自分の前提が崩れてハッとしたことがある。その前提は、「訪れた人は触ってくれる」というもので、想像の中の「人」は、展示物の前を通り過ぎることはなく、なにやら興味津々に触ろうとしているのだった。展示に触れた後のことばかりを考えて、通り過ぎていってしまう人に「いかに興味を持ってもらい、触れてもらうか」ということがすっかり抜け落ちていた。

以前のエントリーで紹介したDesigning Gestural Interfacesの中では、展示物とユーザーの距離に従って空間を3つのゾーンに分けている。

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Attraction:最も遠いゾーン。展示物の大きなディスプレイ、音、外装デザインなどが興味を惹くきっかけになる。このシステムを使っている他のユーザの様子が興味をひくこともある。

Observation:中間のゾーン。展示や製品のディテイルをみることができる。このゾーンではインストラクションの案内版などが非常に重要な役割を果たす。他のユーザーのジェスチャー操作をみてシステムがどのように機能するのかを学ぶこともできる。

Interaction:最も近いゾーンで、実際に展示や製品の操作を行う。

こういったフレームワークがあれば、もう少しよいユーザエクスペリエンスが考えられたのかもしれないが、当時は上の3つのゾーンのうち、Interactionのゾーンのことだけが検討され、少し離れた領域のことは忘れ去られていた。

サンフランシスコのExploratorium の展示は、科学の単純な原理だけを使った、シンプルなインタラクションであるにもかかわらず、目を見張るように美しいものや、知的な好奇心をかき立てる素晴らしいものが本当に多い。このExploratoriumのプロジェクト、Fostering Active Prolonged Engagement書籍)=APEでは、Initial Engagement(=最初の興味喚起)の重要性が語られている。上の3つのゾーンで言うと、Interactionのゾーンだが、ここでも素早く美しさを感じられたり、楽しい経験ができなければ、それ以上の探索は打ち切られてしまう…このために、明確なスタートとゴールをもつような構造の展示ではなく、どこからでも開始できるようなオープンエンドな構造が有効であるとされている。また、長い時間楽しむには、いろいろなことが出来る必要があるが、たくさんのことができるように見えてしまうと、最初の時点でうんざりしてしまうこともある。長く楽しめて且つうんざりしない、このスウィートスポットを見つけることが重要なのだと。

APEにはこの他にもインタラクションデザインを考える上で大切な洞察がたくさんある。例えば、単純な操作や原理を素早く理解でき、いろいろと試してみたいことが次々と出てくる、そんな経験が長時間のアクティブな関与につながるということなどだ。これはとても大切なポイントで、システムと対話する方法が獲得しやすく、しかも、それを活用することでシステム側は豊かな反応を返す。このやり取りの豊かさが次のやり取りを生む。

インタラクティブな展示を考えて行くときは、人との距離の視点や、インタラクションのなかでのInitial Engagementが何なのか?をよく考える必要がある。やはり、他人は自分が思っている以上には興味をもってくれない、というのは本当なのだ。

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Waves

かなり、やられました。アナログな魅力は強いです。
自然はやはり芸術のなかで魅力的なモチーフですね。そのなかでも波は数学的な性質をもちながら、人の感情を揺さぶるような特質があるのでしょうか…

波関連では、過去にこういったものもありました。

Wave Slice
音を入力とする (波形ですが…)

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MTM03に行った

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MAKE: Japan :Make: Tokyo Meeting 03に行ってきました。はじめてでしたが、個人的にはかなり面白かったです。出展者も来場者も同じ目線くらいで、敷居が高くないのが良いですね。出展者の方々の妙にテンションの高い説明につられて、ついこちらもいろいろと見て回ってしまいました。

Fabricものや、 既存のデバイスを別な用途に使ってしまうものが印象に残りました。

次は、我々も!?

ちなみに、こんなかたちでUSのMake Onlineで紹介して頂いたことがあります。かなり下の方です。(笑) Made in Japan – 10/13/08 (Make Online:)

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オープンソースハードウェアとは

「オープンソースハードウェア」という、あいまいに使っている言葉が気になり少し調べてみた。Wikipediaによると、2002年の世界情報社会サミットでアナン事務総長の発表が原動力になったとある。(少ししらべてみたが、このサミットの詳細は不明)この発言は情報格差をなくそうとしていたものだったようで、そう考えると「オープンソースハードウェア」はソーシャルな文脈からうまれてきた概念と捉えて良いのだろうか…

オープンソースハードウェアという言葉にはじめて触れたは、このブログでも何度か紹介しているニール・ガーシェンフィールドの「ものづくり革命」(2005)のなかで。「ものづくり革命」のなかでは、このような形で紹介されている。

これまで長い歳月にわたって、生産手段の所有・非所有が経営者と労働者を分かつ基準になっていた。しかし、工業生産の手段が簡単に入手できるようになり、設計を無償で共有できるようになれば、ハードウェアもソフトウェアと同じ進化の道をたどる可能性は高い。

工業生産の手段を誰もがもてるというところが、「ものづくり革命」のなかでの「オープンソースハードウェア」の大切なポイント。もういちど、WikipediaにもどるとWikipediaではオープンソースハードウェアとは以下のように説明されている。

オープンソースハードウェアは、フリー/オープンソースのソフトウェアを使ったハードウェアを指す場合と、ハードウェアの概要・設計・実装などの情報をフリーなライセンスで提供することを指す場合がある。

個人的な感覚から言うと、後者を指している場合が多いように思う。(昨年10月時点だと、まだ、その定義についていろいろな議論がなされているようだ。)

オープンソースハードウェアはその後少し文脈ずらしながら、MakeInstructableなどによりDIYのなかで大きく盛り上がりはじめている….(hackaday.com)。商業的な文脈では、BugLabChumbyなどいくつかのベンチャーがオープンソースハードウェアの取組みをはじめているのは周知のとおりだ。(最新の事例、技術動向などについては、日経エレクトロニクス1000号1001号に詳しい。)

今後、オープンソースハードウェアという概念が浸透するのか、浸透したとするとデザインに対してどのような影響を与えるのかは良く分からない。それでも、現時点だとGainerのようなで手軽にハードウェアをスケッチできるデバイスが登場したことで、インタラクションデザイナーにとっては初期のデザインプロセスのなかで発想を広げ、実際に体験しながらスケッチを繰り返すということができるようになりはじめている。このようなデバイスを誰もが手軽に入手しやすいというところから、様々なデザイナーやアーティストが試行錯誤し表現の幅が広がって来てもいる。

一方で、日経エレクトロニクスの記事にあるように、ハードウェアのうちの嗜好性の高い筐体や外装が、カスタマイズされるようなことになると、ハードウェアデザイナーとしては仕事が無くなるような嫌悪感を抱くかもしれない。まだ、この先はわからないけれど、様々なジャンルのデザイナーにとってよい機会となるような接点を見つけていければと思う…

 

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